2016年2月29日月曜日

投稿1000回に向けて

みなさま

こんにちは!


この詰まらないブログも投稿1000回を迎えようとしています。

そんなこんなで、今までを振り返っての三部作をアップさせていただきます。


投稿1000回に向けて



母をおもふ   高村光太郎
 
 
夜中に目をさましてかじりついた
あのむつとするふところの中のお乳。
 
「阿父さんと阿母さんとどつちが好き」と
夕暮の背中の上でよくきかれたあの路次口。
 
鑿で怪我をしたおれのうしろから
切火をうつて学校へ出してくれたあの朝。
 
酔ひしれて帰つて来たアトリヱに
金釘流のあの手紙が待つてゐた巴里の一夜。
 
立身出世しないおれをいつまでも信じきり、
自分の一生の望もすてたあの凹んだ眼。
 
やつとおれのうちの上り段をあがり、
おれの太い腕に抱かれたがつたあの小さなからだ。
 
さうして今死なうといふ時の
あの思ひがけない権威ある変貌。
 
母を思ひ出すとおれは愚にかへり、
人生の底がぬけて
怖いものがなくなる。
どんな事があらうともみんな
死んだ母が知つてるやうな気がする。





この歳で 母想うと 涙する





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